安全な痛みの中で

 
3.11 東北地方太平洋沖地震

激しい揺れ

そのとき僕は江東区にいたんだ

街は軽いパニックに陥り、群衆は騒然とする

目の前で大きくグラつくビルは崩壊を連想させ

高い建物に囲まれた僕は、酷い恐怖に襲われる

壁がはがれおちるビルがあって

こっちではエントランスに亀裂が走り、タイルが砕け散る

向こうでは高層部からは割れたガラスが降ってきた

「ガシャーン」

幸い近くで怪我人は出なかったけど



怖かったよ

揺れる

揺れる



東京では深刻な被害はなく、震源からも程遠かった

ここは被災地ではなくて、僕らはテレビ越しの惨状に絶望するにとどまる

発生から一週間が経っても

何かを語ることなんかできない

こんな僕の口から出てくる言葉なんて軽過ぎて、外気に触れた瞬間に霧散する

色もなく、形も失って…

今回の地震が日本にもたらした衝撃は、大きな大きな傷痕を残した

僕にできることは、せいぜい細々と節電をして募金して

一生懸命に働いて、経済の歯車の一部に徹するくらいなもの

仕事休んでいいなら現地に行くよ

炊き出しの手伝いでもなんでもやる

相変わらず僕はそういう青臭い男で

邪魔にならないように、笑顔で、誰かのために体力を使いたい

自己満足?

いいじゃないか

自己満足で人の助けになるなら、いくらでも自己陶酔しよう

偽善だと思われたって構わないさ

誰も助けない慈善より、誰かを助ける偽善のほうが有益なんだ

『やらない善よりやる偽善』(ハガレンより)


でもね、それでも投げだせない責任のために、僕は会社で毎日の業務をこなすしかなくて




やっぱり僕は安全な痛みのなかにいるんだよ

続いている余震にビビって、情弱共の買い占めで商品が棚から消え失せても



それでも結局、僕は安全な痛みの中にいるんだって


そう考えると胸が苦しくてなる

ごめん、マジでごめん


せめて、被災者の方々や救助活動に従事している方々を心の底から応援します

自衛隊ふぁいとっ!

日本ふぁいとっ!

みんな!

ふぁいとっ!



そういえば、報道の中で家族を失った方のコメントで印象的な言葉があった

「今は泣いてなんかいられない。生き残った人たちと前に進むしかない」

僕にその痛みがわかるとは言わない

でも、自分なりの解釈でその気持ちとともに生きる

一緒にその痛みを乗り越えたいと思う



最後に


無力でごめんなさい