【3巻】カノジョは嘘を愛しすぎてる【ネタバレ感想】(今さら)

 
カノジョは嘘を愛しすぎてる:3巻を読んで…

今さら何なの?何で3巻なのって言いたいのはわかってるw

4巻の発売が2010年7月26日だからねww

あえて3巻のレビュー書きます><

ネタバレありなので要注意です

ではいきます


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青木さんの漫画って端的にすごく意味の詰まった瞬間とかが多くて

ストーリーもさることながら、ある場面のセリフとか、ちょっとした事柄にすごくテーマを感じる

部分的に切り取ってすごく考えさせられることがたくさんある

特にテーマに対して二つの正論がぶつかるような

心が苦しくなるようなジレンマを抱えた問題を提起する

今回は高樹氏をクローズアップしたい

まずは高樹氏の言う現実とアキの理想論

高樹氏がリコたちのバンドを売り出すのにアキにプロデュースさせようとしてさ

これは嫌な言い方をすれば金儲けのためなんだけど(普通に言えば単なる商売)

ちょっとフザけた言い方でアキにプロデュースの話を持ちかける

で、アキは高樹氏の言い方が気に入らなくて噛みつく

「あんた一体なに考えてんの?」

すると

「仕事だよ ビジネス 音楽と言う嗜好品を言葉巧みに人民に売りつける金儲け」

とりあえず会ってみないか?って言うんだけど

アキは吐き気がするぜ!!って撥ねつける

そこで高樹氏

「オレにこう言って欲しいのか?

アキ、会ってほしい子達がいるんだ まだまだ技術はないけれど 瑞々しい感性にあふれた新人だ 音楽的にも今が大事な時期だから信用できる奴にあの子達を預けたいんだ お前がプロデュースをしてやってくれないか」

言葉ってのは言いようで、良く聞こえるものを選んで発するというのも一つの方法論としては間違ってない

でも納得するためだけにごまかした言い方をせず、真実を捻じ曲げないで汚さを隠さない高樹氏の言う"誠意"にも共感が持てる

アキの言う理想論は生理的な部分で至極論理的ではない

でも、アキの理想論も絶対的にわかる

「あんたにはあんたの正義があるってのもわかってるし 結局いつだって僕は納得させられていいように利用されてきたけど 利用する側に回るのだけは絶対にごめんだ」

そういったキレーゴトは僕も大好きで、時に人をイラつかせてしまうのだけれど

でもね、やっぱ違うんだよね

マンガ的にいえばこうであって欲しいんだけど

現実では通用しないことが多いんだよね

だからこそ理想に対する想いが強くなっていくし、憧れが増していくしアキのように頑なになってしまう



でね、これはまさに正論対正論で

アキの理想論と高樹氏が見せる現実の対比

このコントラストも見どころのひとつで

高樹氏はアキに騙される側にいていいのか?みたいなこと言う

確かに高樹氏の言い方ややり方は問題もあるけど、少なくとも悪だとは思わない

後述する「プロ意識」と資本主義あってこそだと思う

だからそんな言い方しなくても…てなる

騙す側と騙される側なんて一元に二分するような問題ではないけど

こういった過剰さも豊かなコントラストを担っていて

青木さんらしい構成だなぁって感じる


それとさ


金を払う価値のある音楽を提供するためにバンドに楽器を弾かせない高樹氏

これはクリプレに対しても同じなんだけど

代価をとる以上はそれにふさわしいクォリティを提供しなければならないするというプロ意識

商売とはこういうものだ、価値のあるものこそ代価が発生するべきであるという信念

高樹氏の言い方こそ利己的だけど、実際はプロだからこそなんだよね

これまた正論すぎて思わず閉口してしまう



理想主義なんか現実を見せれば一刀両断できてしまうものなんだぞと…

これは青木琴美マンガの特徴の一つなんだけど

「うわっ」て思うけど好きなんだな


一つ一つのエピソードも丁寧でさ

アキがさ、お嫁に行くお姉さんを想ってつくった歌の回想とか

すごく簡潔にまとめてるんだけど丁寧に気持ちを表現してくれてて

アキの思いが伝わってきて

そんな大事な歌を、仲間は早く弾かせて欲しくて

もっと頑張って上手くなろうとか

そんな気持ちに涙するアキとか

ライブで演奏するときが近づいて

普段緊張なんかしない瞬が自分の演奏でアキの歌がヘボく聞えたらどうしようとかなってて

そして3巻ラスト

最高だったエピソードを綴ったあとに

"だから自分でも信じられなかった

僕がクリプレを抜ける日が来るなんて…"

この温度差

この上げ下げ

飽きさせないで楽しませてくれそうな予感だね

こういった過去エピソードを踏まえた本編の展開もめっちゃ面白いね!!


おしまい